いわゆる「乗り鉄」の一筆書き乗車の旅体験     
                  
(注、「乗り鉄」とは鉄道マニアのなかでも列車乗車、路線通過などに  強い興味を持つ人たちの通称。一筆書きとは、同じ箇所に二度、筆を走らさないで絵柄や複数の文字を書くこと。鉄道乗車では初乗り券で同じ駅を二度通過することなく始発駅、終着駅を結ぶ大回り、または迂回乗車すること)。 09/May/・08  
                

                                    
 鉄道マニヤ「テッチャン」の知人からタイトルのような鉄道乗車を教えていただいた。話に聴いていたが、実践したことがある人に初めて出会った。彼氏は親切にも、タイトルのような旅ができる列車ダイヤを作成してくれた。始発駅を大阪環状線新今宮駅として、初乗り券120円を購入、すぐ隣接駅の天王寺駅までゆけるところを琵琶湖を一周するような路線を経由して到着するのである。天王寺駅まで3分もかからないところを、乗り換え四回、6時間強かけて大迂回して到着するプラン。知人の計算によると、乗車距離は337.5キロ、運賃ベー スなら5、460円になるのである。           
                      
車窓からの眺めがいいj好天気の朝を睨んで出発したが、その前に、こうことが可能なのは、JR旅客営業規則にちゃ んと規定されているからである。 むずかしい部分は省略して要点を記すと、東京近郊区間及び大阪近郊区間の「大 都市近郊区間」は、発着地点間の複数のルートのいずれを経由してもよいという制度である。大阪環状線で到達駅を内回りしようが、外回りしようが、自由に行けるのと同じと考えればわかりやすい。                 
                       ただ、守るべきルールは次のようなものがある。                                         
 有効期間は一日、  途中下車しない(改札口を出ないこと)、同じ駅、同じ路線を二度通過しないこと。                                              
 これらの条件を守らないと、不正乗車として通常の運賃のほか、場合によってはペナルティを課した倍額料金を請求 されることもありうる。車内での検札はめったにないが、一筆書きの旅をしていることが分かる行程表などを持ってい ると車掌は了解するはずである。        
                                                  8;25 大阪環状線新今宮駅で外回り電車の乗車。駅に着いたのが早かったので、来た電車に乗る。車内放送で救護案件が発生したため8分遅れで発車したと知る。月曜の朝である。通勤通学、それにUSJに行くのか、カジュアルなかっこうの女の子たちで満員。こんな混雑した電車に乗るのは珍しいこと、田舎モンになったなあ。騒々しい連中は西九条駅で降りた。ゆめ咲き線に乗換えだ。長蛇の乗降客がいる大阪駅ホーム。無為徒食の身から見れば、毎朝通勤ごくろさん、という感じ。朝からサラリーマンは疲れているような、怒っているような、複雑な顔をした群集がホームにあふれている。ラッシュの混雑というのは昔からの風景。なかなか解消されていないのだ。荷物をもった外国人があきれて顔をして立ちすくんでいる。                                                  
                          9:16  人ごみを抜けて8番線ホームへ。予定より早くついたので、待つことしばし。数本の京都行とか米原行とかの電車をやり過ごす。東海道線は多いが、東海道線・北陸線経由とか東海道線・湖西線経由は本数が少ない。京都ツアーへ行くのか、意外にも外国人グループが多い。白人たちは大柄で目につく。                                   

大阪環状線のダイヤはとにかく、ここからは計画表どおりでいかないと、うまく運ばない。東海道線・湖西線経由で敦賀行き新快速に乗る。高槻まで立ちんぼだった。乗ってみて分かったことは、この電車の後ろ8両は京都駅で切り離し、前4両だけが敦賀行きである。知らずに7両目に乗ったので、京都駅でせっかく座っていた席を離れて前方車に移動した。たしかに敦賀まで12両もいらない。京都駅で乗客はがたんと減り、ついで山科駅でさらに減る。電車は少ない客をのせて湖西線へ。このあたりからなら、ガラガラとなって朝飯も飲み物飲むのも抵抗がなくなるな。                                                                     
 かつて富山の赴任していたことがあるので、「雷鳥」で大阪と行き来した。そのころは米原から北陸線だった。まだ湖西線は建設の話題にものぼっていなかったころだ。 その湖西線があるところはかつてなんとか鉄道が走っていた。大津に勤務したころはバイクがジープで移動していたので、この鉄道に乗ることは、ほとんどなかった。すでに湖西は過疎化の兆しが進んでいた。 あの悪名高い雄琴温泉がまだフーゾクの巷と化す前だから、昔話だな。比叡山へ坂本から登ったり、堅田の漁港をバイクで走ったりしたので、湖岸を通るのは、なんともなつかしい。                           
            
 山科を過ぎて周りの乗客を眺める。前にいるのは、薄青い背広上下、眼鏡の初老のおじさん。黒革カバンを膝に窓外をじっと眺めている。敦賀方面へ商用の出かける風情である。その隣は男子学生。そういえば、この沿線には芸術系とかスポーツ系とかの新興大学がある。「駅弁大学」というよりも、いまや快速電車停止駅ごとに大学あり、という勢いである。広げているノートをちらり覗くと、「栄養と栄養素の違い」なんてことが書いてある。ご苦労なことである。脇の男性は七十後半の顔である。青いポロシャツにだぶだぶの茶色ズボン。眼鏡を外して手に持ち、小さな時刻表を開いてダイヤを目で追っている。荷物がないようだが、旅行者なんだろうか。向うの方に中年女性が、二三人。 ジーパンの女子学生が脚をひろげて豪快に寝ている。                                           
                                         
 遠くにに琵琶湖の水面。にび色に光っている。大津の港は懐かしい。かつて競艇場があった。今もあるのかな。紅葉館とかい大様変わりしている。堅田町であったが、いまは大津市内になっている。まだ琵琶湖大橋が構想されていたころである。夢の大橋なんて呼んでいたが、夢は実現したかな。若い乗客がここでたくさん降りた。普通電車に乗り換えるのだろう。                                                                                          
 進行方向の右側のイスに座れば、琵琶湖側が見やすい。左は比叡山・比良山系、右は琵琶湖。狭い陸地に高速道、湖西線、国道が縦貫している。 田植えをするばかりの水田が目立つ。小さいトラクターが水田をかき回している。水田のそばに大型のパラソル、プラスチック製と思われる白いイスとテーブル。お百姓さんも、おしゃれになったものである。                                                                      

蓬莱駅を過ぎたころから、琵琶湖が最接近。湖岸の砂浜まで見える。季節になれば、水上ボートや水泳客で賑わうのだろう。 近江舞子では、それらしきリゾートふう建物が並ぶ。 比良山には何度か登山に来た。琵琶湖を眺めおろす、いい山であるが、近年は登山者、スキー客が減って、バスやリフトが運行していないらしい。                
                                    
近江高島駅を出たところで、駅前のガリバー像がちらっと見える。この町は、いわゆる町起こしにJ・スイフトの「ガリバー旅行記」を取り入れ、それにちなんだ村を作って、観光客を集めているという。ユニークな試みであるが、よくまあ、そんな企画が実行に移されたものだ。近江今津駅で8分停車。富山行きのサンダーバードの追い越し待ちである。車掌が交代している。若い女性から中年の男性車掌に代わった。代わったばかりの若い女性は人探し顔で、この車両に来て、いかついおっちゃんを見つけると、さきほどのお問い合わせですが、云々と腰をかがめて説明している。JRも親切になったものである。ここから敦賀までは各駅停車になるという。                             
                                                               
 きょうの琵琶湖は、お天気がいいせいか、湖面の靄が立ち込めてかすんでいる。いわゆる山水画ふうの景色で、竹生島もぼんやり。遠くの伊吹山系は薄い輪郭を見せている。 琵琶湖名物の漁法、エリが湖岸にたくさんあった。矢印型の網の広がりが湖岸から湖中へ水面に模様を描いている。                                           
                          11:05 トンネルを二つ潜り抜けて近江塩津着。大阪駅から1時間45分の乗車時間で、滋賀と福井の県境まできた。ここで姫路行きの北陸本線・東海道線新快速に乗り換えた。4分の待ち合わせ、4両編制でスタート。谷あいの平坦地に二つの鉄道が合流しているが、街らしい光景はない。目につくのは、緑の山々である。乗客はすくない。                                                       

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