ユネスコ世界遺産、「世界百名山」の一、

キナバル山 スペシャルT

2001年9月、再訪したキナバル山見聞記


マレーシアの最高峰、キナバル山は標高4095・2メートル。実は1996年までは、4101メートルと称していたが、再計測の結果、惜しいことに6メートル低くなった。したがって地図やガイドブックには今もって旧標高のまま表示されているケースが多い。もう一つ、東南アジア最高峰といううたい文句についても、.すでに疑義が出ていて、論議があるが、とりあえずここでは詮索しないでおこう。なにしろ日本には存在しない4000メートル級であることは間違いないのだから。
コタキナバル市内から約2時間。立派なドライブウエーから大きな門をくぐり登山口に着く。中央に係員がいて入園料を徴収する。3リギット(以下マレーシアドル、1リンギット約30円)       
入山受付所。住所、名前、、年齢、パスポート番号、国籍などを記帳する。ガイドの斡旋をしてもらう。ガイドを雇うことは義務づけられており、自由に単独で山には入れない。ポーターもここで雇う事ができる。1キロあたり6リンギット(マレーシアドル約180円)。10キロを超すと割高になるようだ。登山証明書の発行や不要荷物の一時保管も請け負ってくれる。この建物の左にオミヤゲ屋さんがある。筆者の隣で記念写真に納まってくれたふっくら女性は、管理官。愛想よくテキパキと気持ちのいいマレー人であった。管理官はランチの入ったレジ袋をくれた。出入り口付近の人たちは、仕事を待つガイドやポーターたち。
ガイドが決まり、ザックの計量が済むと、待ちかねていたワンボックスカーに乗せてくれる。約4キロ先の登山口のチンポーンまで運んでくれるのだ。もちろん有料だが、無料パスも往復している。舗装されたバス道。まわりは黄色の花が爛漫。歩いてものいいのだが、時間を惜しむ。登山口の名前は発音をためらうのだが、ここで下車。原住民の家のような建物があり、左手から屋上にあがると、ちょっとした展望台。正面は鉄扉で仕切られて、係員が開けてくれ、ガイドが手続きする。従って、自由に入山できないわけだ。内側に売店。水やパン、菓子類を売っている。パン1個、1・2リギット。
この登山口はすでに1890メートル。ちなみに受付があったところは、1500メートルほどあり、日本の高山植物と見られる花と熱帯の花とが混在している環境。山頂まて゜の距離は約9キロメートル、標高差だけなら、ここから約2200メートル。これだけの標差がある山は日本にはない。槍、奥穂高で上高地から約1500メートル、富士山富士宮口コース五合目からでも1400メートルくらいか。おかしなことに登山口からいったん一気に下り始める。おやおや、と言う感じで広く整った道を下っていくと、3分くらいで、カールソン滝の前に出る。細い水流が涼しげ。現地の人たちが水浴していることもある。ただし、着衣のまま。滝の前から、いよいよ急登が始まる。登山道はおおむね1ー2メートル幅ある。
    
登山道は勾配のある場所は、すべて木枠、または鉄枠で土止めした階段状になっているほか、急な傾斜のところは、梯子がつけてある。たいがいは左側が、あえて言えば山側となるので、
ーー実際には左右とも山中にあるーー右側に立派なで頑丈な木の柵が整備されている。両側とも、いわゆるジャングル。今風にいえば、名にしおう熱帯雨林。入り込めば、目をこらしても数メートル先の視界がきかないほどの密生樹林。冗談でも、道を外したら、ただごとでは済まない樹海て゜ある。
登山道には、500メートル刻みに緑地に白文字で書かれた「サミット・トレイル」の里程標があるほか、現在地を示した略図の看板がある。木の板に刻みこんだ地図で、コース全体で、今いる場所が一目でわかる。板には小さな屋根までついていて時代劇でみる高札のようだ。羊歯や葉の大きな木々があり、視界は広がらず木陰を歩いているのだが、どこか国内にはない異色の風景に心躍る。ガイド、今回はガンパという中年男性がいっしょだったが、親切に花が咲いていると教えてくれる。そのつど撮った花の写真は別ページに掲載する。
登山口から、3300メートルのカールにあるラバン・ラタ・レストハウスで一泊するのが、キナバル登山の定石。そのラバン・ラタまでの標高差1400メートルの登山道には、ポンデック(シェルター)が7カ所ある。ベンチと屋根がある。和風でいえば庵のような建物。このシェルターには、現在地の標高、次のシェルターまでの所用時間、距離の掲示がある。大体、20分から40分ごとにシェルターが現れるから、誠に心強い。とくに熱帯雨林の名のごとく、不意のスコールはすさまじい雨量を投下するので、一時避難に重宝するのに違いない。
注目すべきことは、この7カ所のシェルターには必ず水洗便所が設置されていることだ。手洗い水が出る蛇口もある。床はタイル張り、便器は陶器製である。七年前の登山では、青空トイレであったが、進化の跡が顕著だ。水は上層部から引いており、そのための水道管が登山口沿いにずっと敷設されている。さすがにペーパーまでは用意されていないが、日本国内の山ではまだ放置されている懸案にもきちんと取り組んでいる事がわかる。翌日の登頂登山では、3996メートルのサヤサヤ小屋前のトイレでさえも水洗であった。冨士より高いところにきれいなトイレがある!!
ガイドのガンパが水を飲んでいる。水も、ちゃんと飲料水確保のタンクが各シェルターに整備されている。1・5メートル四方のタンクで、蛇口がついていて、まさに天然のミネルウォターを飲むことか゜できる。なんども飲んでみたが、体に異常は生じなかったところからして、正真正銘の山水と信じていい。したがって、500ミリリットルのペットボトル一つを携帯すれば、厄介な水補給問題は解決するといってよい。ここまでの記述にあるとおり、登山道には避難場所、トイレ、水が確保されていて、安全登山に十分に留意されていることを改めて体験した。

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