2009・02・17−20


一日目 

寒さ厳しいおりから少しでも温かいところに行きたいなあ。というわけで、三泊四日沖縄本島のレンタカー巡りを計画した。                          

関空へ朝が早い。8時10分発ANA便に間に合わせるために珍しく五時起きした。まだ暗い。七時前に到着した。格安切符は団体ツアー崩れだから、フリーツアーとはいえ、搭乗券の交付は団体ツアーのフロントでもらう。曇り空だが、いい天気の朝が明けた。                                              

あの9・11いらい厳重になった身体・手荷物検査。男女係員が慇懃丁重にベルト、時計、ペットボトル、ウイスキーボトルなどは別皿でチェック。許可を求めてきてウイスキーボトルの中身を嗅ぐ。ペットボトルの水は専用の検査器にタッチしている。ようやくパスして、搭乗口近くの売店でおにぎりとサンドウイッチと缶コーヒーを買って朝食にした。                                                                                        

 定刻から10分遅れて出発、2時間10分、那覇空港に到着した。機内で那覇は小雨、気温15度と放送されたが、じっさいには快晴で温かかった。「めんそーれ、沖縄」の大懸垂幕。思ったより広々とした大きな空港だ、以前、石垣島帰りに給油のため立ち寄ったことを思い出した。


 ロビーを行く人々は、一目で沖縄顔と分かる人が多い。やや地黒、丸顔、濃い眉、中肉中背の人たちだ。47都道府県のなかで、これほど県民の特徴が鮮やかなのは沖縄県民のほかはないだろう。見かけばかりでなく、非常に愛想がよく、人なっつこい面もある。


地政学的には台湾、中国大陸、フィリピンに近く、朝鮮半島も遠くない。沖縄の民族性、文化・風土性などが本土と大いに趣きがちがうところだが、そのことが沖縄の人々にとって必ずしも歴史的に有利であったことがない。本来なら島嶼国として独立していてもおかしくない。世界にはこのくらいの面積、人口の国はいくらもある。徳川時代の幕藩体制のときにしろ、明治維新後についても、同じである。本土育ちにとって沖縄はいろいろな感慨を持つ場所である。

空港内の飾りにシーサーの土器像、胡蝶蘭の赤い花。センバツ出場の興南高校野球部がんばれ横断幕。これだけで、もう沖縄のロカールカラーに彩られている。

空港でレンタカーを借りる予定だった。すぐ前で処理できると、タカをくくっていたら、乗客が揃うまで待たされたうえ、20分ほど離れた豊見城市内まで運ばれた。借りるのに時間がかかったのが、目論んでいた計画をオジャンにされてしまった。借りたのは三菱ランサー。沖縄本島を南北の三分のニくらいを縦断している沖縄自動車道に豊見城・名嘉地インターから乗る。 このICはまだあたらしい。道路はすいていて、快適だった。中城パーキングで休憩、レンタカー会社脇の道の駅で買った弁当をここで食べる。                

駐車する際、ハプニングがあった。縁石に近づきすぎて、バンバーの下部をガリガリとやってしまった。けっこう大きな音がしたので、居合わせた人たちが振り返った。学生らしい男が、おっちゃん、バックしたらまた擦るで、持ち挙げたろか。ありがたい申し出を受ける。おっちゃん、乗っていてもいいから、ギヤをニュートラルにしてくれ。仲間五人が、せーの、で車を持ち上げて、縁石から離してくれた。いやー、どうもどうもありがとうございます。関西から来た学生たちらしい。テキパキとやってくれた。感謝の言葉を繰り返す。

 レンタカーを借りる際、一日1500円の賠償保険に入っているが、しゃがんでみると、音の大きかった割りには損傷は目立たない。ほっとする。レンタカー会社とやり取りする交渉を考えると、うっとしかったが、これなら問題ないかなと思う。駐車した前の歩道に「大東すし」の看板がある屋台。Tシャツのお姉さんがいた。今年初めて見るTシャツ姉さんだ。それにしても「大東すし」とは、どういものかな。その後もこの看板を再三見た。


 飯を食べながら、ふと横を見ると、近く不発弾処理をするので、通行禁止だという看板が立っている。まだ沖縄戦の{鉄の嵐」と言われたアメリカ軍の猛烈な艦砲射撃、空爆の遺産があちこちに残っているのだ。つい先ごろの国会でも、いつまでこんな事態を放置しているのだと処理予算化が求められていた。

 満腹して、いよいよ当初の密かな、密かでもないか、宜野座村営野球場で春季キャンプ中の阪神タイガースの練習風景を視察に行くことにする。事前の調べでは、沖縄キャンプは今日で打つ上げ、あさっては高知・安芸市に移動する。打ち上げはおそらく午後の練習が終わったあと、赤星選手会長の合図で手締めをして終わるだろう、、、、と勝手に想像して車を走らせる。

 山歩き仲間の先輩、東大阪の山城さんは「うるま市石川、、」と聞いていた。沖縄南、沖縄北ICを通過する。左右の斜面にハイビスカスの赤、黄色、紫の花が咲き乱れ、ヤシの木が茂っている。どこかハワイでみた通りと似た印象。ところが、道路標識が凄い。「流弾注意」、「獣注意」の看板。前者はハンターの撃つ銃のことか、もしや米軍の射撃演習の流れ弾を指すのか。後者の看板にはイノシシらしき獣の絵があったので、この二つの看板はセットなのかもしれないが、地図上ではあの広大な米軍のアジア最大の軍事基地、嘉手納が広がっているのだ。日本国中の米軍基地の75%を背負わされている沖縄だけに「流弾注意」には驚かされる。


 石川ICを過ぎたころから左手に金武湾、太平洋の海が見える。東京ディズニーランドの62倍の広さと聞いていた、あの「キャンプ・ハンセン」はこんなところのあるのか。沖縄にはいたるところに米軍基地がある。



 さて、宜野座ICだ。自動車道から外れて大きく時計回りに導入路を村に入ってゆく。すぐに村役場。役場のそばに臨時駐車場がいくつかあるようだ。どんどん下ってゆく。がらんと空いた駐車場に車を止めた。おや、妙に空いているな、怪しい予感がわく。ほんのちょっと歩くと一塁側スタンド方面の看板。それに従って野球場に入ると、スタンドはガラン。グラウンドもガラーン。外野の塀に虎ユニフォーム調の「歓迎 阪神タイガース」の横断幕。どうしたことか、この閑古鳥が鳴いているのは!!!!         

 スタンドで三人のTVクルーが放送資材を片付けている。
 「阪神の練習は、どうなったんですか」
 「昼前の終わったよ。選手らみんな引き揚げた」
 「エッ、せっかく大阪から来たのに」

 「打ち上げ日は早やいんよ」
 放送関係者はTVコードなんか巻きながら、笑った。ほかの二人もつられて笑っている。

 少し離れたスタンドで解説者がカメラにむかってきょうの練習風景を録画取りしている。最終日になってウイリアムズ投手が元気なピッチングを見せたのは、よかった。かれもしっかり
調子を上げている、、、としゃべっている。

ああ、赤星選手や真弓監督の勇姿を見たかったなあ。なんという拍子抜け、なんと口惜しいこと。せめてレンタカー会社での対応が手際よかったら、間に合っていたかもしれない。残念至極だった。

 口惜しいけど、球場前まで行ってみると、見物人相手の店屋も仕舞い支度、すでに引き払っているラーメン屋もあった。元祖タイガーラーメンって食べてみたかったなあ。放送局の中継車が二台、こちらも後片付け中。なんともマの抜けたことだが、こればっかりは見込み違い。沖縄の旅は大いなるつま付きから始まったな。

 未練たっぷり沖縄自動車道に舞い戻り、許田ICを経て国営沖縄記念公園にある「美ら海水族館」を目指すことにする。南北に長い地形の沖縄本島にあって真ン中あたりから東シナ海に突き出した半島の先である。本部町にある。宿泊先の名護市内を抜けて行き、また名護市内に戻ることになる。

許田ICを出ると、海である。東シナ海を左手に見ながら名護市内を走る。21世紀の公園という壮大な名前の公園横を通る。名桜大学という聞きなれない大学名の看板を見る。

それにしても、いたるところで道路工事中だ。決まって歩道側の10−20メートルくらいの短い区間であるが、目に余る。年度内予算の消化なのか、来年の2010年沖縄総体に備えての道路整備なのかわからないが、渋滞の原因である。沖縄には那覇市内にある唯一のモノレール、「結いレール」を除いては鉄道がない。移動にはバスと車しかない。島外の観光客はほとんどがレンタカーを利用する。事実、名所、観光地や街を走る車は「わ」ナンバーばかりといった光景だ。

 国道58号に沿って走る。道路標識は整備されているし、こちらはカーナビの案内を受けているので、おおむね道迷いするころなく走れる。途中のコンビニやつり宿みたいなところに「水族館入場券割引券あり」の看板。あの水族館は国営のはず。国の直轄事業(実際の管理運営は財団法人)のものが割引されているのが妙な感じなので、利用をためらった。

 海洋博公園は海沿いに広大な面積。赤や黄色の花が咲き乱れている。歩道のプランターにもポーチュラカや日日草、パンジーなどがデコレーションされていて、いい雰囲気。あちこちに駐車場があり、遠い駐車場からは連絡バスが運んでいる。

世界最大級の水族館といわれる正面にご自慢のジンベイザメの像。入場券は1800円。けっこうなお値段である。年間パスポートが3600円というから、それに比べれば初回は高い。もっとも実験中として午後4時から入場すれば、1260円となるそうだ。
どうも観客動員、入場料収入等を模索しているようだ。本土からすれば遥か遠方なので、観光客がリピーターしてくれなくては、底をつく恐れがあるかもしれない。

 パンフによると、ここの海水は沖合い350メートル、水深20メートルのところから取水しているとある。二時間くらいで循環しているとか。鉄筋四階建て、水槽数77。最大の呼び物の水槽は「黒潮の海」。巨大なアクリルパネル製の水槽(高さ8.2m、幅22.5m)。パネルの





厚さは60センチという。ほとんど魚影に歪みがない。ここにイワシなど小さな魚群、オニイトマ キエイのマンタをはじめジンベイザメが遊弋していた。                                                                                

 「黒潮の海」の前には観覧席があり、水槽からやや離れて俯瞰しながら全体を見渡せる。ジンベイザメは一尾と思っていたら、なんと3尾もいた。大きいのは7.9mもあるという。この巨体でもって、悠々と泳いでいる姿を下から見上げるように観賞できるのは素晴らしい。写真は水槽の前に立つ人たち。泳ぐジンベイザメと大きさを比較できる。

ジンセイザメはたくさんの小魚に目もくれず、エサにしようともせずに、悠然と端から端まで泳ぎ、ゆっくりとUターンを繰り返している。大阪の海遊館でも見たジンベイよりも大きく、見ごたえがあった。立って見、座って見、十分に堪能できた。この水槽のほかにサメ類の巨大な骨格展示や、オイランカサゴなど珍しい魚がいる「サンゴの海」、「熱帯魚の海」、「深層の海}などの展示があって、魚好きとしては十分に楽しかった。タイガースカラ振りのウサが少々晴れた。

 外に出たら、ちょうどイルカのショーガ始まるところだった。一日四回公演のラストに出会ったわけで、「オキちゃん劇場」のスタンドで見る。このころ風が強く、ときおり小雨が散る天気に変わったが、すぐまた晴れた。そんななかで5匹のイルカが、高くジャンプしたり、手(ヒレ)を振ったり、べろを出して見せたり。よく仕込まれた芸を披



露して面白かった。                                                                   
                                                 
 人間にとっては面白い芸だが、イルカにとっては嬉しくない訓練、もしくは虐待されていると思っているかもしれない。このへんは微妙な問題。

 近年は環境にしろ動物に対してにしろ、人間本位の見方ですまないことが多いので、簡単に割り切るのはむずかしい。とくに動物にむやみにむずかしい芸を仕込み、それをビジネスにすることに批判の声がある。命をちじめていたり、余計なストレスを与えていたり。とはいえ、イルカをこんなに上手に訓練するのは大変だろうな。観客席からは大きな拍手が沸き起こっていた。

ホテルに向かう。名護市街地を抜けて東シナ海沿いに恩納村方面を目指す。道筋に「ハブ対マングース闘争ショー」の看板。沖縄ならではの見世物なんだ。「タコライス」専門店もある。タコライスのタコとは、あのタコ焼きに入れるタコではなくて、なにか香辛料のことらしい。 一度賞味してみよう。                   

 58号線をはずれヤシの街路樹が続く道に沿ってゆくと、名護マリオットホテルは小高い高台にあった。左右、対になったシーサーがで迎えてくれる。シ−サーは内地の神社仏閣などにあるア・ウンの狛犬、つまり阿牛、吽牛と同じである。おそらく内地の狛犬像はこのシーサーとも源は同じなのであろう。

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